櫻の王子と雪の騎士 Ⅰ
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それは幼い頃の私だった。
どうしてそう思ったのかは分からない。
ただ、直感的にそう、感じたのだ。
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「あ...兄様」
「おい、いい加減兄様はやめろ...せめて兄さんにしろって言ってんだろ?」
「え、でも...」
それはまだ年の頃五つにも満たない。
白髪の、幼いが目鼻立ちの整った女の子が、これまた幼いにしては超がつくほどの美形の男の子の数歩後ろで怯えたように立っていた。
この二人がルミ、そしてジンノである。
「お、お兄さん...あの...」
「どうした」
顔を伏せるルミを見て、ジンノはルミの前に座り込み、目線を揃えて手をその白い小さな頭にのせる。
「............」
ジンノの問いかけに黙ったまま答えないルミの様子を見て、すぐに察しがついたジンノは安心させるように優しくその頭を撫でた。
「......帰りたくないのか」
「...う、...」
今にも泣きそうな顔のルミ。
それでも、そうだと頷くことはない。
「優しいね...お前は」
ルミに聞こえないくらい小さくぼそりと、そう呟く。
そして、若干涙目のルミを優しく抱きしめた。
「...大丈夫、俺は...俺だけは、いつでもルミアの味方だから...俺が守ってやるから」
安心しろ。
そう言って優しく何度も何度も、ルミの小さな背を撫でた。
腕の中でふるえるルミ。
それでも「...うん」と小さく頷いた。
そして二人は手を繋ぎ、歩き始めたのだった。
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次の瞬間
場面は変わる