櫻の王子と雪の騎士 Ⅰ





「落ち着けオーリング!!
 お前がキレても意味ねえだろうが!!てめえの怒りは《天災》を招くこと忘れたのか!!」



 ジンノがオーリングに向かって叫ぶ。



 そう。



 オーリングは《自然》そのもの。



 《自然》の怒りは、《天災》へと姿を変えてしまう。




「いい加減にしろ、オーリング!!」


  
 ジンノの声を聞いてもやむ気配のない天候の荒れように、もう一度声を張る。



 それでも落ち着く事のないそれに、ジンノはため息をつきオーリングの元へと駆け寄り掴みかかった。



「ったく...話を聞け!!!」



「!?...ジンノさん...」



 怒りに目を吊り上げてはいるが、ようやくジンノの声が届いたようだ。



 すぐにオーリングの耳元に顔をよせ、小声で何かを伝えるジンノ。



「......えっ!?」



 それを聞くにつれて、徐々に顔色が正気に戻っていく。



 オーリングの怒りが覚めていくのに呼応するように、天候や地面の揺れが収まっていった。



「分かったか、この馬鹿っ」



 ごんっ



「痛ってぇ、...すんません......」



 全てを把握したオーリングに、一発拳骨を食らわせる。



 しゅんと頭を垂れるその様子は、まるで叱られた子犬のようだった。



 ジンノは、はああ...と、一際大きくため息をつく。



 次の瞬間



 弾かれたように顔を上げた。



(来たっ!!)



 彼の顔は喜びと期待とで、嬉々とした笑みに変わっていく。



「くくくっ......アハハハハッ!!!」



 その気持ちが抑えきれないのか、ジンノは声をあげて笑った。



 オーリング、そしてユーベルもそれを呆然と見つめる。



(ジンノさん、壊れちゃったのか...?)



 腹を抱えて笑うジンノはひとしきりそうし終えると、ユーベルと向き直った。



 変わらず襲い掛かってくるローブの男たちを簡単にけなしながら、口元に笑みを浮かべたまま話し始めた。



「お前の計画は完全に失敗だ」



「っ!?」



不敵な笑みに、ユーベルの脳裏に不安がよぎる。



そしてそれは最悪の形で的中した。





< 181 / 195 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop