櫻の王子と雪の騎士 Ⅰ
「落ち着けオーリング!!
お前がキレても意味ねえだろうが!!てめえの怒りは《天災》を招くこと忘れたのか!!」
ジンノがオーリングに向かって叫ぶ。
そう。
オーリングは《自然》そのもの。
《自然》の怒りは、《天災》へと姿を変えてしまう。
「いい加減にしろ、オーリング!!」
ジンノの声を聞いてもやむ気配のない天候の荒れように、もう一度声を張る。
それでも落ち着く事のないそれに、ジンノはため息をつきオーリングの元へと駆け寄り掴みかかった。
「ったく...話を聞け!!!」
「!?...ジンノさん...」
怒りに目を吊り上げてはいるが、ようやくジンノの声が届いたようだ。
すぐにオーリングの耳元に顔をよせ、小声で何かを伝えるジンノ。
「......えっ!?」
それを聞くにつれて、徐々に顔色が正気に戻っていく。
オーリングの怒りが覚めていくのに呼応するように、天候や地面の揺れが収まっていった。
「分かったか、この馬鹿っ」
ごんっ
「痛ってぇ、...すんません......」
全てを把握したオーリングに、一発拳骨を食らわせる。
しゅんと頭を垂れるその様子は、まるで叱られた子犬のようだった。
ジンノは、はああ...と、一際大きくため息をつく。
次の瞬間
弾かれたように顔を上げた。
(来たっ!!)
彼の顔は喜びと期待とで、嬉々とした笑みに変わっていく。
「くくくっ......アハハハハッ!!!」
その気持ちが抑えきれないのか、ジンノは声をあげて笑った。
オーリング、そしてユーベルもそれを呆然と見つめる。
(ジンノさん、壊れちゃったのか...?)
腹を抱えて笑うジンノはひとしきりそうし終えると、ユーベルと向き直った。
変わらず襲い掛かってくるローブの男たちを簡単にけなしながら、口元に笑みを浮かべたまま話し始めた。
「お前の計画は完全に失敗だ」
「っ!?」
不敵な笑みに、ユーベルの脳裏に不安がよぎる。
そしてそれは最悪の形で的中した。