櫻の王子と雪の騎士 Ⅰ
私の名前は、雪乃 ルミ。
公立高校に通う、ごく普通の女子高生。
いや、少し普通ではないかもしれない。
ルミの人生はとことんついていなかった。
まず、生まれてから十二歳までの記憶が一切ない。
原因は今から五年前に話題になった殺人鬼。幼い女の子ばかりを狙うやつで。
そう。
ルミは運悪く、そいつに捕まってしまった。
早速重たい話になってしまって申し訳ない。
とりあえず話を続けると。
警察がルミを見つけた時には、様々な暴行を受けボロボロの状態だった。
らしい。
正直、なんにも覚えていなかった。
事件のショックでそれまでの記憶を一切忘れてしまったみたい。
気がつくと病院のベットの上。
何にも答えられない状態だったが、名前を尋ねると「…ル、ミ」と、静かに呟いたそう。
とまぁ、これも後から病院できいた話だけれど。
その『ルミ』と言う名前と被害届から、その日以来『雪乃ルミ』という人間になった。
その雪乃ルミと言う女性に親は居なかった。
だから今も一人ぼっち。
母の顔も父の顔も知らないから、未だに自分の存在がよく分からなくなることがある。
──とまあ、それはいいとして。