櫻の王子と雪の騎士 Ⅰ
「............は?何をふざけた事を......」
私は耳を疑った。
もちろん、オーリィさんもそうだろう。
冗談だと判断したオーリィさんがお頭さんにそう言うと、周りの男の人達がそれを否定した。
「ふざけてなんかいやしません!!
あいつはうちの村で人を殺したんですっ!!」
「!......嘘だろう......どうしてっ......」
苦しそうに顔を歪ませるオーリィさん。
────後から聞いた話だと、ユニコーンと言う生き物は豊かな自然の象徴なのだそうだ。
豊かで澄んだ美しい自然のある場所にユニコーンは現れ、その土地を守ると言われる『守り神』としてのいわれもあるという。
オーリィさんが起こるのも無理もない。
しかし、私には分からなかった。
信じられなかった。
神聖視されるほどに尊い存在であるユニコーンが、人を襲い挙句殺したりするだろうか。
(.........何か...何か訳があるのかもしれない、あの男の人達と同じように...あの、ユニコーンにも...............)
そう、私が思った時。
(!!!...目、が...)
ユニコーンの真っ青な、大空を映したような瞳と目が合った気がした。
......いや、気がしたんじゃない、目が合ったのだ。
静かにこちらを見続けるその瞳は、優しく、透き通っていて柔らかい。
とても人を襲った凶暴な生き物には、見えなかった。