櫻の王子と雪の騎士 Ⅰ
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「ノアっ、もうちょっと速くならない?」
『その後ろの男を落とせば、あと百倍は出るがな!』
「それは無理。どうもならない?」
『なるか!!男が私の上に乗ってるというだけでむしずが走る!!
いち早く降ろせ!!気持ちが悪い!』
「そんなに嫌うことないじゃない...
それより、さっきよりかなり饒舌になったねえ。聞き取りやすい」
『慣れただけだろ
それより少しでも速くして欲しいならその男をさっさと落とせ!!!』
「ムリ。頑張って」
「..................あの、ルミちゃん?」
「はい?オーリィさん」
「ノアはなんて言っているんだ?
俺には聞こえないから、何を言っているのかさっぱり分からないんだが...」
『聴こえないようにしてんだよ、気付けよ
ていうか、気安く名前を呼ぶなバカが』
「ノア、しっ!ちょっと黙って」
「ル、ルミちゃん......」
「あ、大丈夫ですよ、オーリィさん
すぐに王都にも着くみたいですから
ノアのことは気にしないで、ね?
もう少し待っててください」
「えっ、あ、ああ...」
『仕方なくだぞ、仕方なく!
ルミの願いだから聞いたんだ、二度とゴメンだからな!!』
「もう、ノア、ちょっと煩い
オーリィさんは私の命の恩人なの!
それ以上言ったら私、怒るよ?」