櫻の王子と雪の騎士 Ⅰ
『ルミっ!!向こうを見ろ!!』
「えっ、……」
ノアが目で指す、その方向に目を向けると、そこは人混みに溢れた場所。
普段のルミならば絶対に気が付かなかっただろう。
しかし、その時は何故だろうか、簡単に見つけることができた。
その人混みに紛れ、拳銃を片手に、王宮前に立つ王子達を狙う、黒い影を。
(狙われてる……!!
王子様達が、殺されるっ!!!)
そう確信した、その時。
ドクンッ
「ウッ……!!」
(な、何、これ……………)
体が熱い。
ドクンッ
頭が痛い。
ドクンッ、ドクンッ
目の前が、揺れる。
ドクンッ、ドクンッ、ドクンッ
何が起こっているの。
分からない。
─────────守れ。
(……っ……え?)
────────彼らを、守れ。
(何?この、声……)
───────お前が、守るのだ。
(私が………まも、る………)
──────そうだ、それがお前の使命。
(守る……)
─────守れ!!!
ドクンッ
「……守る」
『…?ルミ?』
バッ
「ルミちゃんっ!?」
二人の声が遠ざかる。
ルミは駆けた。
人波をかき分け、真っ直ぐに狙われた王子達の元へ。
どうしてこんなことをしているのか、分からない。ただ、体が自分のものではないように、別物のように動く。
頭の中は、彼らを守れと、ただただ、訳のわからない声が聞こえるだけ。
でも、守らなければと思った。
今日初めて目にした、口も聞いたこともないような人を。接点なんて微塵もないような人を。
守るために駆ける。
ようやく、人混みを抜け出し、王宮前の階段を駆け上がる。
視界には、まだ無事なままの王子達。
ルミは、正装した衛兵たちの静止も聞かずに、彼らの元へと駆け上がる。
しかし、無情にも、黒い影は拳銃の引き金を引いた。
そして、
その黒き弾丸は
王子達の前に、守る様に立ちふさがった白い少女に
深く、深く、突き刺さっていた────