櫻の王子と雪の騎士 Ⅰ








 コン、コン



「失礼致します!!
プロテネス卿、国王陛下が参られました!!」



 ルミとオーリング。



 二人だけだった空間に、第三者の声が大きく響く。その声が紡ぐ内容を理解するのに、そう時間はかからなかった。



 え.........



 国王陛下って...... 国王様!!!!



 何で国王様がここへ!!



「ったく、はえーんだよ.........」



 ぼそりとオーリングが呟く。



 その声と表情はやけに刺々しい。ジロリとその第三者の声のする方を睨みつけている。



 きっと、ドアの向こうでオーリングを待っている第三者は、その冷たい眼差しを拝まなくとも、恐怖に冷や汗を感じているに違いない。



「オ、オーリング、さん?」



 堪らずルミは声をかけた。



 はぁぁ............と、大きくため息をついたあと、不機嫌そうに顔をしかめながらルミを見つめ、口を開く。


「陛下が、ルミちゃんの意識が戻ったと聞いて、見舞いに来たんだよ.........
はぁ......相変わらず情報早いよねぇ、もう嫌気がさすくらいだ。断っていいよ、てか断りなよルミちゃん。王様だからって気にすんな」



(気にすんなって.........それは、いくらなんでも.........)



 オーリングの意外な台詞に、目を丸くするルミ。



「どうする?国王とか、そんなの抜きにして、自分の体調だけを考えて。会う?会わない?」



 真剣な彼の顔に、わずかに戸惑ったが、ルミはその目をそらさずに、「会います」と答えた。



 そっか...と少し残念そうにオーリングは頷き、扉の方へと向かっていく。



 その後ろ姿は何故かやけに寂しそうに感じた。





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