櫻の王子と雪の騎士 Ⅰ
ビュウゥーー!!
「きゃああ!」
「っ!!」
そんな話を繰り返していると、突然大きな風が吹いた。
その風に、私のプラチナブロンドの髪が大きく舞い上がる。
声を上げて突然の風に驚く彼女たちを横目に、私の翡翠色の瞳は風に舞う自身の髪を映し出す。
白に限りなく近い色素を失ったプラチナブロンドは、おそらく、辰巳が私を『白亜の女神』と呼ぶ理由の一つなのだろう。
同時にこれも彼女たちが私を嫌う原因の一つでもある。
この目も髪も、何故か私はみんなとは違う。
私の親は異国の人だったのだろうか。この国でこの姿は、良くも悪くも、人を引き付けてしまう。
とりあえず、目の前の彼女たちはお気に召さないみたい。
「ったく!なんでこんなに風が強いのよ」
イライラとしながらぐちゃぐちゃに乱れた髪を手櫛で整えようとする美和子。
それに比べて、どんなに風に吹かれてもサラサラと何もなかったように落ち着くプラチナブロンドは、心底鬱陶しく彼女たちの、美和子の瞳に映ったのだろう。
美和子はキッとこちらを睨みつけながらつかつかと私に向かって歩いてくる。
崖っぷちに立っていた私の目の前まで来ると、睨みつけたまま美和子は私の髪を掴みあげた。
…痛い。
「アンタって本当に目障り!!
特にこの髪!生まれつきからか知らないけど、先生が何も言わないからっていい気にならないで!
どうせ辰巳様の気を引こうって算段だろうけど、無理だからっ!あんたの汚い髪じゃ辰巳様は釣れないからね!」
だったら、ほっといて欲しい。
うっかり本音が漏れそうになるのを、言ったところで逆なでするだけだからと心の中にとどめておく。
美和子は何をやっても表情をひとつも変えない私に顔を赤っかにさせて怒り、更に強く髪を掴み上げ声を荒らげた。
「〜〜なにか言いなさ『やめろー!!』」
「!!?」