櫻の王子と雪の騎士 Ⅰ
◇
風が吹く。
ああ、何でだろうか。
私はこれを知っている。
暖かなこの風を。
桜の花びらと遊ぶ、この風を。
『.........ねえ、約束だよ』
気付くと、ルミが見つめる先には、少年が立ってこちらを見つめていた。だが、ここからはその少年の表情も姿さえもはっきりとしない。
誰?誰なの?
必死に声を出そうとしているのに、それが音になることはなかった。
『......また明日、ここで待ってるから』
まるで自分に言われているようで
その少年の傍に行きたくて、足を前に出す
歩いている筈なのに、二人の距離は縮まらない
それどころか、少年の姿が徐々に小さくなっていく
待って!と言いたいのに、声が出ない
そして、とうとう彼の姿は消えてしまった
残されたルミの回りには、どうしてだか、桜の花びらが舞っていた。きっと、もう会えないだろう少年の姿を思い出し、ルミの胸はぎゅううぅっと苦しくなる。
目頭が熱くなり、どう使用もなく切なくなる。この感情は何なのか。何も分からず、ルミはその場にうずくまった。
◇