櫻の王子と雪の騎士 Ⅰ
中から光が漏れ、その眩しさに一瞬視界が奪われる。
息を整え、ようやく目がその光になれた時、視界いっぱいに夕日に照らされて赤く色付いた影の部屋が映った。
その陽の光が入り込む窓際、ベッドで上半身を起こし、背中に枕をおいてゆったりともたれ掛かった様子の人がいる。
赤く染まったくせのある長い髪、驚いたように見開いたその瞳はあの時と同じ美しい黄金色だ。
その時しっかりと確信がもてた。
彼があの、シェイラなのだと。
以前よりもふっくらとした体と、健康的な肌色に、彼が生きようと考えを変えてくれたことが分かる。
生きていた。
その事にルミの心はいっぱいになる。胸が詰まるほどの喜びが溢れる。
鼻がツンとして泣きそうになる。
それくらい嬉しかった。
「............ルミ」とシェイラが聞こえるか聞こえないかの小さな声で名を呼んだ。
それがまた嬉しくて、ルミの顔が緩み、自然と笑顔が生まれる。
もっと傍へ近づきたくて、彼の元へと歩いた。
そして
ギュウウゥゥ
「......っ!!!」
ルミは優しく、けれどしっかりとシェイラを抱き締めた。。
抱き着かれたシェイラは夕日よりももっと赤く頬を染め、突然の事に驚き固まっている。
アワアワとテンパるシェイラを他所に、ルミは抱き締める力を強める。
長く味わうことの無かった自分以外の人の温もり。
それが今、優しくシェイラを包み込む。
じわり、じわりとその実感が湧く度に、胸が詰まるほどに狂おしい気持ちに襲われる。
戸惑いながらもシェイラの腕は、ルミの背中へと伸び、その存在を確かめる様にそっと触れ、徐々にしっかりと抱き返すように力強く腕を回した。
ギュッと目をつむり、その温かさを逃がさぬよう、無い力を全て使って精一杯抱き締める。
「良かった…シェイラさん......!」
シェイラが生きていた事実を素直に喜ぶルミと、それを受け入れ彼女が与えてくれる温もりを噛み締めるシェイラ。
真っ赤な夕日をバックに二人はまだ暫く抱き合っていた。
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