櫻の王子と雪の騎士 Ⅰ
闇の魔力。
それは、数種ある魔法の属性において、最も優位に立つ属性とされている。
それは何故か。命を奪うような強力な魔法が多いことに加え、他の属性に対する相性が最も大きな理由と言えるだろう。
火、水、草、土、雷、風......本当に様々な属性が存在する中、闇の魔力はただ一つの属性を除く、残りすべての属性に対して高い効果をもたらす。
尚且つ、上位者になると魔法界において最も厄介な魔法も使えるようになる。
フランは今、シルベスターを庇い、その魔法を受けてしまった。
きつく目を閉じ、青白い肌は変わらずそのまま。
こうしている間にも、兵士達はどんどん倒れていく。
(くそっ......私は、どうしたらっ......)
兵士達を見殺しに出来ず、悩み葛藤していた、その時
ボウッ!!
兵士達とローブの男たちの間を隔てるように巨大な炎のカーテンが広がる。
「シルベスター国王!!」
メラメラと燃え盛る炎の中から現れた一人の戦士の姿。
「プロテネス卿!」
「オーリング......」
素早くこちらへと近づき状況を確認するのは、オーリング・プロテネス。
「遅れて申し訳ない」
眉根を寄せ、悔しそうに言うオーリングに対し
「プロテネス卿が来てくだされば百人力だっ!!」
どこからか兵士達の喜びの声が上がる。
オーリング・プロテネス。
数多くの兵士達に慕われる彼は、時折王都を飛び出し、災害などで被害を受けた村や町の復興の手助け・国の自然バランスの調整を行う王族直下の役人であると共に
彼自身が王族の分家《プロテネス》の当主
そして、世界最強と唱われる、優秀魔法使いのみで編成されたフェルダン王国近衛兵特殊部隊、その副隊長なのである。