櫻の王子と雪の騎士 Ⅰ



「先日の非礼、謝ります。申し訳御座いませんでした」



突然の謝罪にシルベスターはキョトンとする。



「主も守れぬような人間が、口にしていい言葉ではありませんでした」



思い当たる節が無いわけではない。



先日と言っても、だいぶ前のこと。



『あんたの、周りの人間のこと考えてない、自分の事しか考えてないそういうとこ、本ッ当に大嫌いだっ!!!』



その通りだと思った。



だから謝る必要なんてないのに。



こころ優しいオーリングはずっと自分の言葉を気にしていたのだろう。



(本当に、いい男だ)



こんな状況下なのに、ニコニコと嬉しそうに笑うシルベスターを、若干引き気味にオーリングは見つめる。



はあ、と一つため息をついてオーリングは言う。



「......守りますから。貴方は必ず私が守ります
だから、安心してその辺に寝てて下さい」



突っけんどんなそのセリフ。やはりまだ、オーリングはシルベスターのことが嫌いなのだろう。それでもその言葉の節々に優しさがにじみ出る。



「...ああ。頼むよ」



だからこの男は、誰からも慕われるのだ。



そんな二人を他所に、オーリングが作り出した炎の壁はどんどんの消えていく。



闇の魔力に他の属性は不利。



何故なら、魔力を吸収する事が闇の魔力の本当のあり方なのだから。



目の前に広がっていた炎の壁は闇の魔力により吸収され、跡形もなく消え去った。



(オーリングは、どうするつもりなんだろうか......)



闇の魔力に対し、たった一つ抵抗できる光属性の魔力を、オーリングは使えない。



行き先を阻むものが無くなったローブの男達は、ローブを引き摺りながら近寄って来る。



後、3メートル。



もう、目の前のそこまでやってきた時。





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