櫻の王子と雪の騎士 Ⅰ








「ハッ、笑わせる。自分の家族を死へ追いやった張本人を助けると!
流石は、御心が広い、オーリング殿」






───────





ほんの数秒、しかしそれよりも長く感じられる





無音の時が流れた。





オーリングの頬がぴくりと動く。





「忘れたわけではないだろう?そなたの両親、兄弟たちはその男に殺されたも同然!!
よくもそのような男を助けることが出ますなあ!!!」



その額に血管が浮き出る。
オーリングの魔力が体から溢れ出て、それに呼応したかのように風は吹き荒れ地はうねり、木々はざわめく。



常人であれば立ってもいれないほどの魔力による圧力が全身に掛かり、城がきしんだ。





「......お前が、何を、知っている......」





呻くように絞り出される声に、全身が震え上がる。






「......貴様ごときに、俺の...俺たちの、何が分かるっ!!!!」






オーリングの怒りの声と共に、雷鳴が鳴り響く。



ああ、これは............



(怒りだ......)



自然が、怒りに溢れる。



土も木々も風も水も



オーリングの愛するものが、怒りに狂う。



オーリングが苦しむほどに



その怒りはつのり、そして爆発する。



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