Trick and Love
Trick and Love




ぺたん、ぺたん。

廊下にわたしのスリッパの音。

人がいない校舎はなかなかに響くものだ。



図書委員の仕事は嫌いじゃないけど、クラスにひとりしかいないから委員会の後は少しさみしい。

今日なんてわたしひとりだけ呼び止められたせいで、他クラスの人さえいない。



開けっ放しだった教室の扉をくぐり自分の席に向かおうとして、ぴたり。

足を止める。



「瑞希(みずき)……?」





そこにはわたしの彼氏が寝ていた。





すぅすぅと気持ちよさそうな寝息。

長いまつげにわたしよりずっときめ細やかな肌。

起きていて綺麗なら、寝てても綺麗で。



うわ、もう。ムカつく。



「ちょっと、瑞希、なにしてるの?
おーい、瑞希くーん」



ゆさゆさと体を揺らしても起きない。

……わたし帰れないんですけど。



ていっとチョップをひとつお見舞いする。

髪がふわふわでこっそりドキッとした。






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