Trick and Love
瑞希は「んん……」と声を上げながらむっくり体を起こして、まぶたを半分くらい開ける。
しぱしぱ。眠そうだね。
とりあえず起きたみたいだし、と委員会で使った筆記具なんかを片づけ始めた。
するとそこに乗りかかる彼。
「お、おも。重いよ。
寝ぼけてないで早く退いてー」
「美央(みお)……」
かすれた声。
自分の名前を呼ばれたことにびくりと反応しつつ、なんでもない風を装う。
「なぁに?」
「……はよ」
首を回すと目の前にふにゃふにゃの笑顔の彼。
そのままぎゅーっと抱き締められた。
「わ、こら、なにしてるの!」
ぐいーっと押しのけると不満気な表情。
完全に寝ぼけてるじゃない。
猫みたいにマイペースで、いつもは寝ていることが多い。
たまに本も読んでる。
無口で愛想なしなのに、超絶かっこいい無気力男子っていうのが普段の瑞希。
だけど、ふたりきりになると、そんな姿は綺麗さっぱり消えてただの甘えたになる。
今日は眠いせいなのか、いつもより酷い。