私の好きな人 私を好きな人
追加情報
プルルルルルル…
私は、しまりかけた電車にギリギリで飛び込んだ。
『はぁ、間に合った…』
『飛び込み乗車はご遠慮ください』
駅員さんのアナウンスに、首を縮めて、心の中で『ごめんなさい…』と言う。
私は五月からアルバイトを始めた。
大学や私のアパートのある駅から二駅離れた、セルフサービスのコーヒーショップだった。
あと一本乗り遅れたら遅刻だった…。
新人研修期間中なのに、遅れるわけにはいかない。
私はホッとして空いてる座席を探す。
『あ、紗耶香ちゃん』
呼ばれて振り返ると、美樹先輩と一馬先輩が立っていた。
二人は手を恋人つなぎして、今日もラブラブだ。
『珍しいね、電車で会うなんて』
一馬先輩が言う。
『あ、はい。今からバイトなんです』
私は息を整えながら話す。
『どこでしてるの?』
美樹先輩が聞く。
私が店の名前を告げると、先輩たちは、
『あ、そこ、たまに行くよ』
と言った。
『わあ、そうなんですか!?私、入ったばっかりなんで、まだ全然仕事できないですけど、また来てくださいね』
嬉しくなって、私が言うと、
美樹先輩が、
『コーヒー好きなの?』
と聞いてくる。
『はい、大好きなんです。』
私はにっこりと笑う。
『コーヒー、蒼太も好きなんだよね』
一馬先輩から思わぬ人物の名前が出てきて、私は一瞬、誰だっけ?と思う。
あぁ、あのよく笑う人か。
『蒼太先輩、よく笑う人、コーヒーが好き』
そう追加情報をいれようとした時、
『蒼太といえばさ』
一馬先輩がニヤリとしながら言った。