私の好きな人 私を好きな人
これは女の子をうちまで送る行為とは言えないよねぇ…。



私はずんずんと先を歩いていく蒼太先輩の背中を見つめてため息をつく。


蒼太先輩は、私の三メートルくらい前を歩いていた。

と、いきなり、蒼太先輩が後ろを振り返り、

『名前、なんだっけ?』
と聞いてきた。



う、うそでしょ…。

四月にサークルに入って以来、今日まで四ヶ月もの間、練習や飲み会でしょっちゅう会っていたのに…。

他の先輩には、『紗耶香ちゃん、紗耶香ちゃん』
とかわいがってもらっているのに…。



この人には、名前も知られていなかったなんて。


私は
『し、新谷紗耶香、です』

言いながら、本当にびっくりしていた。


蒼太先輩は、
『そ』
また短く言うと、スタスタと歩き始める。


この人、本当に女の子に興味がないんだ…。




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