私の好きな人 私を好きな人


『お前の島の人たちは、知らなかったのかよ、お前の島のこと』




……はい?


口をあんぐりさせる私を見て、蒼太先輩はこどもみたいに大きな口を開けて大笑いをしている。


『ちょ…それ、ズルくないですか?私はこっちに来て、初めてって意味で…』


『いや、生まれて初めてって言った!』

『そ、それは、言葉のあやっていうか…』

『お前の負け!』


蒼太先輩はものすごく嬉しそうに私をビシッと指差すと、

『来週から一週間、A定食だからな、忘れるなよ、逃げるなよ』


そう言うと、鼻唄を歌いながら、スタスタと歩き出した。


『う…ウソでしょ…』


私は慌てて追いかけながら、呟く。


蒼太先輩は振り返って、

『賭けるって言ったの、お前だからなー』
とこどもみたいに叫んだ。


蒼太先輩が、私を見て笑ってる…。


私は落ち込んだ振りをして俯いた。

ほんとは、赤い顔を見られないためだった。




< 42 / 108 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop