私の好きな人 私を好きな人
『紗耶香ちゃんはこのへんの子?』


一人の男の先輩が、自分のグラスを持ちながら、席を移動してきた。


『いいえ』

私が、瀬戸内海に浮かぶ小さな島の名前を口にすると、その先輩は、一瞬きょとんとする。


私は知らなかったけど、私の生まれ育った島はかなり知名度が低いみたい。


こっちに来て、その島の名前を口にするたびに、誰もがこんな顔をするので、私は毎回がっかりする。


人口一万人にも満たない、小さな島だけど、
どれほど海がきれいだったか、
どれほど星がきれいに見えたか、
どれほど人々が温かかったか。

みんなは知らない。



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