私の好きな人 私を好きな人
暖かくなって、やってくるのは桜の花びらだけではなく…



『きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ』


ハナの笑顔に癒されていた私は、視界の隅に、動く黒い物体を見つけしまった。


ハナがびっくりして駆け寄ってくる。


『新谷さん、どうしたんですか!?』

私はハナの背中に隠れ、

『あいつ、あいつが!!もう無理っ、こわいっ!』


ハナの制服のシャツを握りしめる。


『あいつ?あぁ、ごき…』

『無理、それ以上言わないで!ほんと無理、ハナ、やっつけて!』


ハナは、

『了解!』

と言うと、あっという間に、殺虫剤を手にして、私の大嫌いなあいつの息の根をとめたうえ、トイレに流してくれた。



『もう大丈夫ですよ』

そう言われて、客席の隅っこに避難していた私は、恐る恐る、ハナに近づく。


『ハナ…』

『はい。』

『ほんとに、ほんとに、ありがとう。ハナ、すっごく頼もしいよ』



私が心からそう言うと、ハナは少し照れ臭そうに笑って、

『良かったです』

そう答えた。



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