薫子さんと主任の恋愛事情

「あ!」

でも大登さんは何かを思い出したのか小さく声を出すと、後部座席のドアを開けて車内から何かを取り出した。

「とし子さん。これ少しですけど、お土産です」

大登さんの手には小箱。よく見るとどこでかったのか、それは海老せんべいで。さすが大人のデキる男!と関心然り。目先のことにとらわれる私と大違いと、自分の子供っぽさを痛感。

「すみません。私、全然気が回らなくて」

「こういうことは、気づいた方がやればいい。気にするな。それにおまえは……」

大登さんはそこまで言うと、ポケットからおもむろにキーホルダーを取り出した。そして眉を動かし、『これを買ってくれただろ』と目で語る。

「ああ、はい」

そんなアイコンタクトがなんだかくすぐったくて、ヘヘッと照れ笑い。

「楽しかったみたいで何よりね」

おばちゃんにそう言われると、「はいっ」と元気よく答えた。

「じゃあ俺はそろそろ。明日もなって言いたいところだけど、社長のお供でゴルフなんだ」

「そうなんですね。頑張ってください」

そう返事をしたものの、残念と思ったのは内緒。付き合いは昨日始まったばかりだし、本当のところ寝不足気味で疲れた身体はゆっくりしたがっていた。

「また明後日、会社で」

「はい。今日はありがとうございました」

大登さんはおばちゃんにも挨拶をすると車に乗り込み、車内から手を振るとゆっくり車を発進させ、その姿はすぐに見えなくなった。



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