薫子さんと主任の恋愛事情

みんなの視線が怖い。麻衣さんは、どう思っているだろう……。

悪い方にばかり考えてしまい、そんな言葉が頭の中を駆け巡る。

でもいつまでも経理部の入り口で座り込んでいるわけにもいかず、大登さんに手を引かれて立ち上がると、私の方を見ていた麻衣さんと視線がぶつかった。

驚いているのは間違いないけれど、表情だけでは麻衣さんの思っていることまでは読み取れない。

落ち着かない気持ちのまま立っていると、麻衣さんがおもむろに歩き出す。そしてゆっくり近づいてくると、何を思ったのかいきなり私の身体を抱きしめた。

「薫子……良かったじゃない!!」

「え?」

「もういろいろ心配してたのよ。あんた二次元にしか興味ないし、ゲームのキャラが恋人とか言うし」

「ちょ、ちょっと、麻衣さんっ!! 声が大きいですって!!」

まさかこんなところで、二次元好きを曝露されるとは。

慌てて麻衣さんの口を押さえても後の祭り。麻衣さんと大登さん以外の人は、今の私の話を聞いてきっと引いてるだろうと見てみれば……。

「ホント、ホント。西垣さんに人間の恋人ができて良かった」とか「八木沢主任、ゲームキャラクターに勝ちましたね」と、みんなで盛り上がっている。



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