薫子さんと主任の恋愛事情
大登さんは午後から外回りで、営業の人と一緒に昼前には会社を出て行った。帰りは遅いと聞いている。
いつもなら『帰りは遅い』と分かれば一緒に帰れないんだとガッカリするところだけど、今日は正直なところ大登さんと顔を合わせてもどういう顔をしていいのかわからなかったからありがたい。
いつもどおりにしようとしても思っていることが顔に出るような気がするし、大登さんのことだからそんな私の心をすぐに読んでしまうだろう。そうしたら、ごまかすのは至難の業。
大登さんに会いたい気持ちはあるけれど、今日のところはさっさと仕事を終わらせて早めに帰宅するとしよう。
あ、そうだ。久しぶりに井澤のおばちゃんのところで、夕ご飯をご馳走になるのもいいかもしれない。大登さんと付き合うようになってからあまり顔を出してないし、おばちゃんとゆっくり話もしたい。
すぐに連絡をするとおばちゃんは、『薫子ちゃんの好物を用意して待ってるわ』と快く受け入れてくれる。
おばちゃんと話をすれば余計なことを考えなくても済むし、きっと気持ちも落ち着くはず。
自分自身にそう言い聞かせると、まだ入力途中のパソコンに向き直った。