薫子さんと主任の恋愛事情


「ただいま」

井澤のおばちゃんの家の玄関を開けると、中からいい匂いが漂ってくる。

「薫子ちゃん、おかえりなさい」

笑顔で迎え入れてくれるおばちゃんに、それだけでさっきまで重くなっていた気持ちがふわっと軽くなる。おばちゃんの好意に甘えお風呂にまで入らせてもらうと、身体も心の中のわだかまりも綺麗サッパリ洗い流れていった。

「それで、今日は何があったの? ひとりでここに来たということは、八木沢さんとのことよね?」

夕ご飯を食べ始めてしばらくすると、おばちゃんはおもむろに話しだす。

おばちゃんもまた、私の心を読む達人。私の行動や顔色ひとつでなんでもわかってしまうから、隠し事はできない。

「おばちゃんには敵わないなぁ。ちょっと長くなるけど、聞いてくれる?」

「もちろんよ。そのつもりで待ってたんだから」

「ありがとう、おばちゃん」

手にしていた箸を置きコップのお茶を一口飲むと、井澤のおばちゃんに向き直り、今日起きたことをすべて話した。



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