薫子さんと主任の恋愛事情
大登さんに会いたいな……。
心から自然に湧いてきた思いは、私の身体を熱くする。
「薫子ちゃんは悲しい顔より、笑ってる顔のほうが数倍可愛いわよ。今、八木沢さんのこと思ってたでしょ?」
「えと……はい」
「八木沢さんに会いたいって、そう顔に書いてあるわよ」
「嘘ばっかり……」
おばちゃんの冗談だと分かっているのに、心の中を読み取られたことが恥ずかしくて顔を伏せる。
「薫子ちゃんは話し下手だしいろいろ聞き出すことはできなくても、一緒にいれば八木沢さんの思いは伝わってくるはずよ。連絡してみたら?」
「でも……」
今日は帰りが遅いと言っていたし、まだ会社で仕事をしているかもしれない。だとしたら、私のわがままに付き合わせるのは申し訳ないような。
「もたもたしない、さっさとメールする!」
「は、はいっ」
おばちゃんの気迫に押され『まだ仕事中ですか?』と簡単にメールすると、手の持っていたスマホがいきなり鳴り出した。