薫子さんと主任の恋愛事情
「おばちゃん、夕ご飯ごちそうさま。また来るね」
「はいはい、いつでもどうぞ。それじゃあ八木沢さん、薫子ちゃんをよろしくね」
おばちゃんは大登さんを真っ直ぐ見ると、ぱちんとウインクして目で合図を送った。
「とし子さん、任せてください!」
そう自信満々に応える大登さんに、私は不安という言葉しか浮かんでこない。
車に乗り込むとおばちゃんに手を振り、その場を後にする。
「ホント、とし子さんっていい人だよな」
「そうですね」
大登さんの言うとおり、確かにおばちゃんはいい人だ。それは私のほうが付き合いも長い分、よく知っているけれど。
「おばちゃんに、何言われたんですか? 教えて下さい」
おばちゃんがいい人だということと、大登さんの耳元で囁いたことは絶対に関係がある。と私は睨んでいる。
「なんでもないって言ってるだろ。そんなことより、コンビニ寄っていいか?」
「そんなことって。もういいです、わかりました。コンビニでもどこでも、勝手に行けばいいじゃないですか」
「何怒ってるんだ? あんまり怒ると、また眉間にシワが寄るぞ」
そう言って笑っている大登さんの左腕を、ペシッと叩く。