薫子さんと主任の恋愛事情
あの時、颯のブロマイドを麻衣さんに取り上げられ、それからは会社に颯はいない。
もちろんまだアパートには颯を始め、二次元のキャラたちは捨てられずにいるけれど。それに依存する生活は一変している。
でもだからと言って私の中に女の魅力が生まれたのかというと、そうでもない。実のところ“女の魅力”がなんなのか、いまだわからずじまいだ。
「女の魅力……」
おもわずボソッと零れた言葉は、大登さんの耳に届いてしまう。
「女の魅力? なんだよ、それ?」
大登さんの怪訝そうな声に、しまったと眉をひそめる。
どうする? 大登さんのことだ、ごまかしは効かない。ならここは正直に、今思っていることを話すべき?
迷いながらも意を決めると、小さく息を吐いた。
「女の魅力って、どういうものなのかなぁと思って」
「なんで急に、そんなこと」
私の口から“女の魅力”なんて言葉が出たからか、大登さんが不思議そうな顔をする。
「急じゃないんです。ちょっと前に、あることを麻衣さんに言われて」
「あること? なんて?」
「なんてって、それは……」
そんなこと、言えるはずがない。
麻衣さんに言われたことを言ってしまえば、それはすなわち“抱いて欲しい”と言っているようなもの。そんなこと恥ずかしくて、私からは口が裂けても言えるわけがない。