薫子さんと主任の恋愛事情
「そう言えば……」
唐突に話しだす麻衣さんに、顔を上げる。
「今度の日曜日、八木沢主任の誕生日だね。プレゼントは何にするか決まってるの?」
「大登さんの誕生日?」
麻衣さんの話を聞いてキョトンとする私に、麻衣さんは「嘘でしょ」と苦い顔。
「もしかして、忘れてたとか?」
「いいえ。全然知らなかった、です」
麻衣さんはもう一度「嘘でしょ」と言うと、あちゃーと頭を抱えた。
「どうするの? 日曜日までに、お祝いの準備できるの?」
「日曜日までに……」
今週末の予定はもう決まっていて、土曜日は大登さんが仕事で会えないけれど、日曜日は大登さんと一緒に料理をすることにしていた。
だから土曜日は久しぶりに、実家に顔を出そうと思っていたけれど。
「薫子?」
ひとり考え込んでいる私に、心配顔の麻衣さんが声をかける。