薫子さんと主任の恋愛事情

それから三日後。

朝早くに目が覚めると、身支度もそぞろにアパートを出て駅に向かう。実家の最寄り駅までの切符を買うと、すぐに来た電車に乗った。

今住んでいるアパートと実家、実はそんなに離れていない。実家から会社にも通えるけれど、両親以上に干渉する兄たちと距離をとりたくて、就職を機にひとり暮らしを始めた。

と言っても、決して仲が悪いわけではない。誰かの誕生日には家族で集まってお祝いもするし、正月も必ずみんなで過ごしている。

ただ兄妹で女は私だけ、しかも末っ子だから心配で仕方ないらしい。だから強くなれと言わんばかりに護身術なんか教えてくれちゃって、ありがた迷惑と言うか困りもの。

今日はひとつ上の兄貴、幸四郎しかいないと聞いているけれど、かなり心配だってりする。

そんなことを考えている間に、電車は目的の駅に到着。小走りに改札を通り抜けると、そのまま駅前のパン屋に駆け込んだ。

ここは子供の頃からの馴染みのパン屋さんで、学生の頃は毎日のようにお世話になった。中でも生クリームあんぱんは絶品で、ひとくち食べただけで私を幸せの国へと運んでくれる。



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