薫子さんと主任の恋愛事情
「美味しい?」
「すごく。やっぱりお母さんの料理が一番好き」
そう言って朝ご飯をパクパク食べる私を、母は微笑ましい顔で見つめている。
「な、何?」
「ねえ薫子、ちょっと感じが変わったんじゃない? なんか垢抜けたというか、女らしくなったような。もしかして、彼氏でもできた?」
「えぇ!? あっ、ゴホッゴホッ!!」
母の思いがけない言葉に、飲んでいたスープを吹き出しそうになる。
「図星みたいね」
そう言った母親の目が、キラリと光ったように見えたのは私だけ?
水を飲み呼吸を整えると、椅子に深く腰掛けて母を見据える。本当はもう少し後で報告しようと思っていたけれど、今更隠し切れないと意を決した。
「同じ会社の人と付き合ってる。もう四ヶ月になるかな」
私に、こんな日が来るなんて……。
言ってから恥ずかしくなって俯くと、私の言葉を耳にした幸四郎が小麦屋のパンを加えながら血相を変えてやって来た。