薫子さんと主任の恋愛事情
「薫子! 俺たちになんの相談もなく彼氏なんて、断じて許せん!」
「なんで自分のことなのに、幸四郎たちに相談しなくちゃいけないの?」
言ってる意味が、全くわからない。
中学生の娘じゃあるまいし。って言うか、そもそも私は幸四郎たちの娘じゃない。なんで兄貴に、そんなこと言われないといけないの?
ひとり憤慨していると、私と幸四郎の間に母が割って入る。
「薫子も、そんなに怒らないの。幸ちゃんは薫子が可愛くて言ってるんだから」
「それはわかるけど、言っていいことと悪いことがあるでしょ!」
幸四郎をキッと睨みつけると、幸四郎は少し怯みおとなしくなった。
「薫子の好きな人は、どんな人?」
母の優しい言葉に私も落ち着きを取り戻すと、椅子に座り直す。
「八木沢大登さんっていって、私の上司にあたる人。歳は二十八歳で、大人で優しくて素敵な人だよ」
本当にそう通りの人だけど、自分で言うとこっ恥ずかしい。
「そう上司の方なの。薫子の顔を見ていればわかるけど、本当にいい人なのね。その八木沢さんっていう人は」
でも母はそう言ってニッコリと微笑むと、クルッと向きを変えて幸四郎を見た。