薫子さんと主任の恋愛事情

「薫子! 俺たちになんの相談もなく彼氏なんて、断じて許せん!」

「なんで自分のことなのに、幸四郎たちに相談しなくちゃいけないの?」

言ってる意味が、全くわからない。

中学生の娘じゃあるまいし。って言うか、そもそも私は幸四郎たちの娘じゃない。なんで兄貴に、そんなこと言われないといけないの?

ひとり憤慨していると、私と幸四郎の間に母が割って入る。

「薫子も、そんなに怒らないの。幸ちゃんは薫子が可愛くて言ってるんだから」

「それはわかるけど、言っていいことと悪いことがあるでしょ!」

幸四郎をキッと睨みつけると、幸四郎は少し怯みおとなしくなった。

「薫子の好きな人は、どんな人?」

母の優しい言葉に私も落ち着きを取り戻すと、椅子に座り直す。

「八木沢大登さんっていって、私の上司にあたる人。歳は二十八歳で、大人で優しくて素敵な人だよ」

本当にそう通りの人だけど、自分で言うとこっ恥ずかしい。

「そう上司の方なの。薫子の顔を見ていればわかるけど、本当にいい人なのね。その八木沢さんっていう人は」

でも母はそう言ってニッコリと微笑むと、クルッと向きを変えて幸四郎を見た。



< 157 / 214 >

この作品をシェア

pagetop