薫子さんと主任の恋愛事情
三男の勇三郎兄さんのセンスは誰が見ても抜群で、本人もこだわっているだけある。でもそれを人にまで押し付けようとするから少し面倒くさい。勇兄がどれだけセンスが良くても、女の私とは合わないこともあるじゃないってね。
でも今日は大登さんのためのものを選んでもらうわけだから、勇兄のセンスが活かされるのは間違いない。
「予算は、どのくらい?」
幸四郎に聞かれて、う~んと首を傾げる。
「特に考えてないけど、普通はどのくらいのものなの?」
逆に聞き返されて、今度は幸四郎が首を傾げた。
「男と女じゃ相場が違うからなぁ……」
「そうだよね。じゃあ値段はそこまで気にしないで、いいなって思ったものにするよ」
大人な大登さんに似合うもの……。
そう思いながらひとつひとつ見ていくと、素敵なレザーバッグが目に入る。
上質そうなそのバッグは、とてもしなやかで好印象。少し丸みを帯びたフォルムは、スーツ姿にもカジュアルにも使えそうだ。
「そちらの商品は、雨に濡れても水が染み込まないんですよ」
店員はそう言ってバッグを手に取ると、ファスナーを開けて中を見せてくれた。豊富なポケットに収納力も問題なし。これひとつで資料や書類、全部入ってしまう。