薫子さんと主任の恋愛事情
「幸四郎、ちょっと」
他の商品を見ていた幸四郎を呼ぶと、一目惚れしたバッグを見せる。
「これ気に入ったんだけど、どう思う?」
「鞄か。うん、いいんじゃないか。俺も好きなデザインだ」
「そう? 良かった。どの商品も素敵で、あまり見過ぎると目移りして決められなくなりそうで」
「ファーストインスピレーション(直感)は大切だな」
得意気にそう言うと、幸四郎は得意気にフフンと笑ってみせた。
ファーストインスピレーションか。幸四郎にしては、なかなかいいこと言うじゃない。
よし、これに決めた!
幸四郎の言葉と自分の直感を信じてブラックのレザーバッグを購入すると、大登さんのプレゼントを抱えて店を出た。
「いいプレゼントが買えたよ。幸四郎ありがとうね」
「おう。彼氏、喜んでくれるといいな」
「うん」
明日大登さんに会うのが楽しみで、いつも以上に気持ちが昂ぶる。
でもここは慎重に。焦ってお祝いの席を台無しにしないように。
「幸四郎、まだ時間ある? 付き合ってくれたお礼にランチ奢るよ」
「マジで? いいのか?」
幸四郎の嬉しそうな顔に、ちょっと照れくさくなる。
「いいよ。何が食べたい?」
「肉!」
無類の肉好きな幸四郎のこと。そう言うと思っていた私は、幸四郎の背中を押しながらショッピングモール内にあるレストラン街へと向かった。