薫子さんと主任の恋愛事情

勘違い……。

坂下さんが大ちゃんと呼び、大登さんが姉さんと呼んだのは、ふたりが姉弟だから。そして坂下さんの後ろで隠れるように立っている男の子が大登さんに似ているのは、甥っ子だからだろう。

タイミングが悪いことに、ふたりが一緒にいるところを目撃したり、ふたりの関係性を疑う噂が回ったりで、私の中にモヤモヤしたものがくすぶっていた。

そういったことが重なって勘違いしてしまったのは、私のとんだ早合点。それは素直に認めるところ。

でも今日のことは、大登さんが悪い。

なにか理由があるにせよ、もっと早くふたりの関係を教えてくれたってよかったのに。秘密にするから、今日は仕事なんて嘘をつくからこんな事になってしまった。

恨めしい気持ちで大登さんを見れば、ホッとしたのか安堵の笑顔を見せる。

「なんで笑ってるんですか? まだ許したわけじゃないですよ。坂下さんのことだって、なんで話してくれなかったんですか?」

「そのことについては謝る。ごめん、悪かった」

「大登さんのこと信じてたのに、ふたりの噂話は耳に入るし。私の不安な気持ちなんて、大登さんにはわからない……っ」

言いたいことが溢れてきて止まらない私の口を、大登さんの口が塞ぐ。

ここは立体駐車場で人はほとんどいない。でも真ん前には坂下さんと息子さんがいて、坂下さんは息子の目を隠すと私に目配せをしてから自分も見ないように後ろを向いてしまった。



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