薫子さんと主任の恋愛事情
「おまえなぁ……」
困った顔をする大登さんに勝ち誇った顔を見せると、その上にいる航平くんに話しかける。
「航平くん、もうお昼ご飯は食べた?」
「ううん、まだ。僕、お腹減った」
さっき三人の姿を見たのはレストラン街。きっとお昼ご飯を食べに来たんだろうと察した私は、大登さんに目線を戻す。
「大登さん。航平くん、お腹が空いてるそうです。私も“誰かさん”のせいでお昼食べ損ねちゃったし、何でも好きなもの食べていいですよね?」
これ見よがしに、“誰かさん”を強調してみる。すると大登さんは航平くんを肩から下ろし近づくと、私の唇をムニュッと摘んだ。
「その“誰かさん”っていうのは、俺のことだよな?」
口を摘まれていて喋れない私は、首を縦に二回振る。
「ああ、わかった。何でも奢ってやる。でも……」
でも?
首をちょこんと傾げると、私の耳元に顔を寄せた大登さんが「今晩は薫子を食べるから、そのつもりでいろよ」と甘く囁いた。
そ、そ、それとこれとは話が違う!
そう反論したいのに、口を摘まれている私にはその余地も与えられず終了。摘まれている指を離されたときには、もう反論する気力も失っていた。