薫子さんと主任の恋愛事情

「コンビニ寄っていくか?」

なんて大登さんに言われても、すぐに「うん」と言えずに困ってしまう。

「なんだよ、いらないのか?」

「ごめんなさい。お腹いっぱい」

「じゃあなんで、アイスクリーム食べたいなんて言ったんだ?」

「それは……」

言えるはずない。今晩のことを考えて緊張してるなんて、口が裂けても言えない。

最近忘れかけていた二次元の世界を思い出し、颯に助けを乞いたくても、こればかりはそうもいかない。

だったら麻衣さん?

どこかで車を停めてもらって、麻衣さんにどうしたらいいか聞いてみる?

でもきっと「いつまでグズグズしてるのよ! 難しく考えてないで、さっさとやっちゃいなさい!」なんて、言われるのが関の山。

恋愛のノウハウがない私には、何が正解なのかさっぱりわからない。世の中の女の子は、どんな事を考えて彼氏と関係を持つのだろう。

考えれば考えるほど、頭の中は不安と恐怖が膨らんでいく。

「薫子、顔が変」

「え?」

「またひとりで考え込んでるよな?」

「わかりますか?」

「当たり前だろ。そうさせてるのが俺だって、わかってるからな」

大登さんを困らせたいわけじゃない。好きだけど、好きだからこそ嫌われたくないと、自信ない自分が出てきてしまう。



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