薫子さんと主任の恋愛事情
二次元の世界では、失敗しても何も怖くない。何度でも好きなところに戻って、何度でも新しい恋ができてしまう。そんな恋しかしてこなかったツケが、こんなときに回ってきてしまうなんて……。
──神様のいじわる。
でも今日のチャンスを逃したら、私は一生寂しい女のままかもしれない。大好きな大登さんを絶対に手放したくないし、ずっとずっと大登さんに愛してほしい。
運転する大登さんを見ると、眉間にシワが寄っている。眉間にそっと手を伸ばし、人差し指でその皺をなぞった。
「触るな! って、薫子に怒られたの覚えてるか?」
ホントに怒られたと思った私は、身体をビクッとさせてしまう。
「ごめんごめん。そんな前のことじゃないのに、懐かしいなぁと思ってな」
「そんなこと、ありましたね。大登さん、颯がライバルなら負ける気しないとか言ってたし」
「実際、勝ったしな」
大登さんは勝ち誇ったように胸を張ると、左手でピースサイン。
「まだ、わかりませんよ?」
「え? そうなの? もしかして、まだポケットの中にいるとか?」
焦ったような大登さんの顔を見ていると、笑いが込み上げてくる。