薫子さんと主任の恋愛事情
大登さんの足に身体を預けるように傾けると、ドライヤーのスイッチがカチッと切れた。
「薫子、こっち向いて」
少しボーッとする意識の中、大登さんの方を向く。と同時に大登さんの顔が近づいてきて、唇が重なった。ほのかに、さっき飲んだコーヒーの香りがする。
大登さんの大きな手が私の頬を包み込むと、甘い声で囁いた。
「寝室に行くぞ」
そういうなり大登さんの腕が下に伸びてきて、身体を抱き上げられる。落ちないように自分から彼の首に腕を回すと、「よくできました」なんて大登さんに子供扱いされてしまうから面白くない。
ちょっとした反抗心から大登さんの首をギュッと絞めると、反対に脇腹をくすぐられてジ・エンド。やっぱり子供っぽいと自覚して、おとなしく運ばれた。
寝室は大登さんの香りが一番して、それだけで気分が落ち着く。
大きなベッドの上にゆっくり下ろされると、大登さんが私を組み敷いた。それだけでも心臓の鼓動は速さを増していくのに、大登さんは甘い口づけをするとパジャマのボタンを器用にひとつずつ外し始めたから恥ずかしさから呼吸が速くなってしまう。
「怖いか?」
怖くないと言ったら嘘になる。でもそれ以上に今は幸せの方が勝っていて、怖い気持ちを打ち消してくれた。
首を横に振ると、大登さんの顔がホッとしたように見えた。
大登さんに大事にされている──
それだけで、身体中が幸せに満たされていく。