薫子さんと主任の恋愛事情
返事することができずひとりマゴマゴしていると、しびれを切らした大登さんがすかさず返事を返す。
「それで、お願いします」
「かしこまりました。ではサイズの調節をいたしますので……」
私のことはよそに、リング購入が決まってしまった。
「大登さん、いいんですか?」
「何が?」
「だって今日は大登さんの誕生日なのに、私がこんな高価なもの」
「わかってるよ。でも薫子もプレゼントくれたじゃないか。そのお礼だよ」
それにしては金額が高すぎる。
「それに、言っただろう」
申し訳ない気持ちでシュンとしている私に大登さんは近づくと、耳元に顔を寄せた。
「そんな先じゃない未来に、薫子が感動するようなプロポーズしてやるって。その準備だ」
囁かれた言葉は耳から広がって、身体中を一瞬で熱くする。
大登さんという人は──どうして私が喜ぶことを、こうもサラッと言ってしまうんだろう。