薫子さんと主任の恋愛事情

「いい笑顔だな。本気で抱きたくなってきた」

大登さんは私を羽交い締めにすると、「何言って……」るんですか、と言いかけた唇を塞がれる。何度か触れたり離したりしたあと、息を吸うために半開きになった唇の隙間から温かい舌を差し入れた。戸惑う私をよそに舌を絡めとられ歯列をゆっくりなぞられると、身体中の力が抜けていく。

ここがどこだということも忘れ大登さんの背中に手を回すと、急に起き上がった大登さんに腕を取られてしまう。

「大登……さん?」

「悪い。いつも偉そうなこと言ってるけど、お前のことになると我を忘れる」

「それって、褒め言葉ですか?」

大登さんの顔を覗き込むと、彼が初めて照れたようにはにかんだ。

今まで知らなかった大登さんの新しい一面を知ったようで、心の底から嬉しさが込み上げる。



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