薫子さんと主任の恋愛事情
でもそんなある日、私は颯からほんの僅かな優しさ(愛情?)を感じ取った。そしてその日を境に、私の中の颯に対する気持ちが一気に変わっていった。
颯に恋に落ちるのは、あっという間で。彼にどっぷりハマってしまい今に至っているというわけ。
八木沢主任だってそう。入社して二年。今まで私になんて、なんの関心もなかったはずなのに。今日に限って、どうして社食で声を掛けてきたの? しかも颯のことで、からかってきたりして……。
少し身体を起こして二段目の引き出しを開けてみれば、いつもの場所に颯がちゃんとこっちを見て微笑んでいる。
「颯……」
いつもならその笑顔に一瞬で癒やされて、何もかも忘れられるのに。何故か今日は、心のざわつきを抑えられない。
颯からドアにゆっくり視線を戻すと、八木沢主任がさっきまでいたドアをなんとなく見つめた。
私には颯がいる。だから八木沢主任のことなんて、私の中に入る隙間はこれっぽっちもないはずなのに。
八木沢主任のことが、頭から離れないなんて……。
今日は体験したことのないことが一度にいっぱい起きたから、キャパ超えした私はどうかしてるのかもしれない。