薫子さんと主任の恋愛事情
3.まさかの告白
なのに、今の私はなにをしているのかというと……。
「ハックションッ!! さ、さむい……」
二月も半ばに入り梅の花がちらほら咲いているのを見かけるけれど、夕方を過ぎれば外の気温は一気に下がり身体の熱を奪っていく。
そんな中、律儀な性格が災いしてか八木沢主任との約束の時間十五分前に、第二駐車場の出入り口、昼間は守衛さんがいる小屋に隠れるようにして立っている。
八木沢主任との約束なんて、一方的なもの。すっぽかすつもりでいたのに、怒りが増せば増すほど八木沢主任にひと言いわないと気が収まらなくなってしまった。
「私としたことが……」
コートのポケットに手を入れると、颯のブロマイドを取り出す。
いつ見ても優しく微笑んでいる颯に(写真だから、いつ見たって同じなんだけど……)、満面の笑みとはいえない笑顔を返す。
「颯、ごめんね」
これは決して浮気じゃないのよ。今日の昼からの流れというか、八木沢主任してやられたというか。この後付き合うつもりもないけれど、大人の対応としてそれならそれで一応お断りをしていかないと。
なんて……。
単なる言い訳でしかないと颯から視線をそらすと、その先に一台の車が停まった。