薫子さんと主任の恋愛事情
「ミス? そんなの、しっかり者の西垣がするわけないだろ」
「だったら……」
なんでこんなことを……そう聞こうと顔を上げたところに八木沢主任の顔が近づいてきて、私の唇に温かいものが触れた。
目をバッチリ開けている私は、唇に触れているものが何なのか知っている。いくら二次元好きな私でも、それがいわゆる“キス”だということくらいの知識はもちろんあった。
いつも妄想や夢の中では、もう何度もしているキス。もちろん相手は颯だから、想像の域は出ないけれど……。
いや、そんなことはどうでもいい。どういう理由があってキスしているのかわからないけれど、こんな私の意思を無視した行為は断じて許すことは出来ない。
大きく息を吸い込むと、八木沢主任の胸に手を当ててその身体を強く押した。
「い、いい加減にしてくださいっ!」
私がそんな行動に出ると思っていなかったのか、八木沢主任が怯む。
私は私で思った以上の力が出てしまい、自分でもビックリ。こんなところでまたしても、護身術が役に立つとは思ってもみなかった。
でもそのお陰で、八木沢主任の腕から離れることも出来た。私の許可無くキスしたのは許せないけれど、とにかく今はここから脱出しなければ。