薫子さんと主任の恋愛事情
4.どれもこれも初体験
やっぱり乙女ゲームの中で見たことのある光景。大好きな颯も、よくそうしてくれた。ゲームの中でのことなのに、最初はドキドキして死にそうだったのを今でもよく覚えている。
今もその時と同じ。息が苦しくなるほど胸の鼓動は速まり、今にも気を失って倒れしまいそうだ。
でもこれは現実で、八木沢主任は私の腰を抱き寄せると倒れしまわないように力を込めた。
「お、薫子は着痩せするタイプなんだな」
「はい?」
それって、どういう意味ですか? 着痩せ……そんなこと誰にも言われたことがないから、よくわかりません。
うん?と首をひねり考えてると、八木沢主任が私の脇腹をキュッとつまんだ。
「ぷよんとして気持ちいい」
その瞬間、八木沢主任が言った『着痩せ』の意味を理解した。
「さ、触らないでください!」
それっていわゆる『太ってる』ってことでしょ? そんなこと女の子に言うなんて、最低だと思うんですけど!
怒って腕を解こうとしても、八木沢主任の腕はしっかり私の腰をガシッと掴んでいて離れない。
そう言えば、最近体重計に乗ってない。
学生の頃は兄たちの相手で、身体を動かすことも多かったけれど。今は身体を動かすといえば、通勤くらいなもの。休日もほとんど家から出ないから、母親からも「太るよ」なんて言われたような。