薫子さんと主任の恋愛事情
「私、八木沢主任が思ってるほど、真面目じゃないですよ?」
「ああ」
「兄四人の中でもまれて生きてきたので、力もあるしおとなしくないですよ?」
「そうか」
「乙女ゲームやアニメが好きな、オタク女子でもいいんですか?」
わかりきっている自分のことなのに、だんだん切なくなってきて声が小さくなっていく。
「心配するな。どんな薫子でも、薫子は薫子だろ。そんなことくらいで、俺の気持ちは変わらない。だから安心しろ」
八木沢主任の優しい声色に、頑なだった気持ちが緩和していくのがわかる。
お試し的なつもりで……。
八木沢主任もそう言っていたし、こんなチャンス、もう二度と訪れないかもしれない。たとえお試しで終わったとしても八木沢主任とだったらいい思い出になるだろうし、休みの日は家に引きこもってばかりで男の人との出会いもない私にはもったいないくらいの話。
急にこんな展開になってるし、三次元の男性と恋をするなんてまったく自信がないけれど……。
真っ直ぐ前を向けば、柔らかい眼差しで私のことを見つめる八木沢主任がいて。颯がゲーム機の中から見つめる瞳もドキドキするけれど、それとは別の何か……もっと熱い気持ちが私の中に湧き上がってくるのを感じた。