薫子さんと主任の恋愛事情

『任せておけ』なんて。一体、何をするつもりですか?

不安な気持ちのまま大登さんの後についていくと、おばちゃんの前で立ち止まり身なりを整えた。

「はじめまして。薫子さんと同じ会社で働く、八木沢大登と申します。昨晩は私が彼女に飲ませすぎてしまい、無断外泊させて本当に申し訳ありませんでした」

そう言って深々と頭を下げる大登さんを見て、私も一緒に頭を下げた。

おばちゃんはきっと、私が昨晩一緒にいた人は女性だと思っていたはず。だから大登さんの言葉を聞いて、驚いているだろう。

気になってそろりと頭をあげると、案の定目を大きくしていて。

あぁ、やっぱり……。

でもすぐにその表情を緩めると、大登さんに柔らかい顔を見せた。

「八木沢さん、ご丁寧にありがとうございます。薫子ちゃんがお世話になりまして。私はこのアパートの大家で井澤とし子です」

おばちゃんも丁寧に頭を下げる。でもその頭をすぐに上げると、大登さんの隣に立ちピタッと身体を寄せた。

「ところで八木沢さん、薫子ちゃんとはどのようなご関係?」

おばちゃんの興味津々の笑顔に、手に汗がにじむ。そう言えばおばちゃんって、ワイドショーとか女性週刊誌が好きだったような。



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