薫子さんと主任の恋愛事情
でもそれも小一時間一緒に過ごすと慣れてきて、綺麗な魚や珍しい生物を見ては大登さんと会話を楽しんでいた。
「このカニ、すっごく大きい!」
「だな。薫子より、脚長いんじゃないのか?」
「そ、そんなことありませんよ」
時折挟む大登さんの冗談にも笑って返す余裕さえ出てきて、まるで子供の頃に戻ったかのようだ。
元々さほど大きな水族館じゃないから、二時間もあれば全部を見て回れた。最後出口手前には水族館のオリジナルグッズやお菓子、お土産などが売っている。一度大登さんと離れひとりで見て回っていると、キーホルダーや雑貨が売っているところで足を止めた。
「可愛い」
ピンクの珊瑚でできたキーホルダーを手に取ると、目の前に掲げてみる。
これなら家の鍵に付けてもいいかも。
ふと横を見れば、淡いブルーの同じものを発見。そんなに派手じゃないし、男の人が持っていても違和感ない……と思う。
今日ここに連れて来てくれたお礼と初デートの記念にプレゼントしたら、大登さん喜んでくれるかな。
中腰で立ち上がり、辺りをキョロキョロ見渡す。大登さんの姿を探すが、トイレにでも行ったのかどこにも見当たらない。
買う? 買わない?
少し迷いながらもピンクと淡いブルーのキーホルダーを手にすると、それを持ってレジへと急いだ。