薫子さんと主任の恋愛事情
キーホルダーを買い終えると、大登さんを探す。
「薫子、こっち」
私の名前を呼ぶ声に振り向けば、出口のドアの前で手を振る大登さんを発見。
「待たせて、すみません」
小走りに近づきそう言うと、大登さんは「全然待ってないし」と大人対応で。やっぱりデートなんてし慣れてるよね……と、自分との違いを痛感する。
早く彼女らしくなりたいな──
自然に、ホント何気なく、そんな言葉が頭に浮かぶ。
まだ付き合って二日。昨日告白された時点では、私の中には颯がほとんどを占めていて。大登さんの彼女なんて務まるのかと思っていたけれど。
いくらずっと一緒にいるからって、まさかこんな気持ちが私の中に生まれてくるとは……。
これが本当の“恋”というものなんだろうか。
不思議な気持ちで少し前を歩いている大登さんを見上げると、まっすぐ前を向いて歩いていた彼が不意に振り向いた。
「ん」
大登さんは手を差し出し、『早く繋げ』と顔で合図を送る。
駐車場までは、目と鼻の先。はぐれることももうないのにと躊躇しつつ、照れくささを感じながらもその手を掴む。