薫子さんと主任の恋愛事情
「それなりの経験……」
「なっ……薫子、今変なこと考えただろ?」
「食い付くところがちがうんじゃないか!」と大登さんはあたふたして見せるけれど、それが私の気持ちを軽くさせるためにしていることだと気づく。
物事を深く考えすぎるのは、私の悪い癖。わかって入るけれど、今すぎには治りそうもない。でも……。
「大登さんと一緒にいれば、私も変われると思いますか?」
「当たり前だ、俺がおまえを変えてやる」
その力強い言葉と優しく包むこんでくれる腕が、私の堅い頭と心を和ませる。
「今日が俺達の、始まりの記念日だな」
「始まりの記念日……」
大登さんのその言葉を聞いて、あっと思い出す。
「大登さん、これ」
鞄から取り出したのは、さっき売店で買ったキーホルダー。そのひとつ、淡いブルーのキーホルダーを紙袋から出すと、大登さんに渡した。
「このキーホルダー、いつ買ったんだ?」
「さっき売店で別々に見て回ってた時に可愛いなぁと思って、お揃いで買ってしまって。すみません、子供っぽいですよね」
私もピンクのキーホルダーを手にすると、苦笑交じりに笑ってみせた。