薫子さんと主任の恋愛事情

私は大登さんの彼女なんだ……。

そう素直に思うことができるようになったのも、きっと大登さんのおかげ。多すぎるほどの愛情表現が、私の中の大登さんへの想いをどんどん大きくしていく。

私の何かお返ししたいな……そんな言葉が頭の中に浮かぶと、鞄の中のある物の存在に気づく。

女の私がこんなもの渡してもいいんだろうか。そう思いながらも鞄を開き小さなポケットを開けると、それを取り出した。

「大登さん、これ」

「ん?」

私の手のひらにある“鍵”を見て驚いたのか、大登さんが目を大きくする。

やっぱり私が鍵を渡すなんて、早かったんだ……。

大登さんの顔を見て後悔すると、ガックリ肩を落とす。

「薫子、おまえ……」

「すみません、余計な真似をして」

「違うよ。それって薫子んちの鍵か?」

「はい。私のも渡したほうがいいかなぁって思ったんですけど、出すぎた真似でしたよね」

なかなか彼女も難しい。これは普段は絶対買わない女性誌でも買って、学習するべきだろうか。

はぁと小さくため息をつき鍵を鞄にしまおうと握り締めると、その手を大登さんが慌てたように包み込んだ。

「誰が出すぎた真似だなんて言った。それ貸してみろ」

大登さんはそう言って私の手から無理やり鍵を取ると、淡いブルーのキーホルダーにそれを付けてしまう。



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